『治癒魔法の間違った使い方』|前線を走る治癒魔法使いと、ローズという師匠
治癒魔法使いが、自分を治しながら身体を鍛える。
戦場では、自分の足で負傷者のところまで走っていき、治して、安全な場所まで連れて帰る。
『治癒魔法の間違った使い方』は、この発想がまずおもしろい。
主人公のウサトは、スズネとカズキと一緒に異世界へ召喚される。
勇者として呼ばれたのは二人で、ウサトは巻き込まれた側。
ところが治癒魔法の適性が見つかり、救命団団長のローズに連れていかれる。
そこからウサトの生活が大きく変わっていきます。
治す力を最大限使うために、自分を鍛える
ローズの訓練はかなり厳しい。
身体を鍛える。疲れたら自分を治す。また鍛える。
その繰り返しで、ウサトはどんどん頑丈になっていく。
戦場では前線を走る。必要なら戦う。
目的は、人を生きて帰すことです。
治癒魔法そのものを別の力に変えるのではなく、治す力を最大限使える身体を作る。
この発想が好きです。
ウサトがちゃんと積み重ねて強くなる
最初のウサトは普通の高校生です。
戦闘経験もない。
そこからローズに鍛えられて、救命団の一員になり、実戦に出て、人を助ける。
外の世界へ出てからも、その根っこは残る。
旅先で何を経験しても、「助けて、自分も帰る」が行動の中にある。
見ていると、ちゃんとローズの弟子なんですよね。
ローズの厳しさが、あとから違って見える
ここから先はローズの過去にも触れます。
ローズは救命団の団長で、とにかく強い。
ウサトにも容赦なく訓練を課す。
でも読み進めると、その厳しさが「生きて帰ってこい」につながっていると分かる。
人を助けに行った本人まで帰ってこなければ意味がない。
だから鍛える。
ローズには、騎士団の大隊長だった頃に仲間を失った過去もある。
そこまで知ると、ウサトへの接し方も少し違って見える。
強くしたいというより、死なせたくないんだろうな、と私は感じました。
この師弟、やっぱり好きなんだよなあ
最初は鬼教官と訓練生。
そこからウサトが成長して、ローズの期待も少しずつ変わっていく。
ウサトは散々怖がりながら、ローズへの信頼はかなり強い。
旅に出てローズの出番が減ると、そろそろ出ないかなと思ってしまう。
そしてまた二人が絡むと、やっぱりいい。
ローズは、あの強さと厳しさのままでいてほしい。
そのうえで、ウサトに向ける特別な信頼や期待がもう少し見えたらうれしい。
ウサトはどんどん強くなる。
それでも中心にあるのは、人を治して、生きて帰すこと。
その考え方を最初に叩き込んだローズまで含めて、この作品が好きです。